■ しえる様 フリー小説 ■
PARTY!! |
抜けるように高い空。 洗濯物を干し終わりマリューは空を仰いだ。 (なんか、あの人の瞳の色ね・・・) 何を見てもムウのことを考える。 とそんなことを思って、マリューは一人顔を赤くした。 今日は10月12日。取り立てて何もない日。 だけど今日は・・・・ ピンポンピンポン・・・ 昼過ぎになって。 ひとりリビングで雑誌を眺めていたマリューは、けたたましいドアチャイムの音に 何事かと慌てて走っていった。 「あら、キラくん。」 ドアの前にいたのはキラ、それにカガリ、ミリアリア、ディアッカ、サイ。 「HAPPY BARTHDAY!」 ドアを開くと一斉に声がそろった。 「今お暇ですか?」 「私たち、マリューさんのお祝いをしに来たんです!」 「夜はムウさんと過ごされるんでしょう?」 口々に言ってそれぞれ手にもっているものを掲げる。 スーパーの袋に入ったボトル、ケーキの箱らしきもの、花束ete・・・ マリューは面食らったが、気を取り直すと、 「まぁ、ありがとう。じゃああがって頂戴。」 と、ドアを大きく開いた。 「おじゃましまーす!」 子どもたちは礼儀正しく声を揃えてドアの中へとなだれ込んでいった・・・・ 「では、お決まりでハッピーバースデイの歌!」 リビングのテーブルにそれぞれ持参したものを広げた。真ん中にはケーキ、それも27本のローソクが立てられている。 ♪Happy Barthday To You〜 Happy Barthday To You〜 Happy Barthday Dear マリューさん Happy Barthday To You〜♪ マリューはケーキのローソクを吹き消す。 ぱちぱちと拍手がおこり、リビングの照明が戻る。 「マリューさん、これ!」 カガリが真っ先にマリューの目の前に包みを差し出した。 その後に続いて私も!俺も!とマリュ―に包みが突きつけられる。 マリューは苦笑しながらも、ひとつひとつ「ありがとう」と言って受け取っていった。 「マリューさん、それとこれはラクスからで、こっちはアスランから。」 最後にキラが二つの包みを差し出した。 「まぁ、ラクスさんたちにまで気を使わせちゃって、本当によろしく伝えておいてね。」 にこやかにマリューはそれらを受け取ると、更ににぎやかなパーティーが始まった・・・ 「お邪魔しました〜」 「マリューただいまvv」 子どもたちが玄関を出ようとするのと、真っ赤なバラの花束を抱えたムウが玄関を開けるのはほぼ同時だった。 「あ、ムウさん、おかえりなさーい。」 ぎょっとしているムウを子どもたちは余裕の表情で出迎える。 「あ、ああ・・来てたの。」 引きつった笑みを浮かべながらムウは答える。 「それじゃ、後はムウさんとごゆっくり〜」 そうしてわらわらと子どもたちは玄関を出て行った。 あっけにとられた表情のムウ。 「お帰りなさい。早かったのね。」 奥からマリューが笑顔で出迎えた。 「なんなの?あいつら・・・」 「お祝いしてくれたのよ。この年になって誕生日パーティも恥ずかしいけど。」 そう言ってムウのもとに歩み寄る。 「ふーん」 そう聞いたムウはなにやら不満顔だ。 「どうしたの?」 「だって、あいつらに先に祝ってもらったんだろ?」 その答えにマリューはぷっと吹き出した。要するにやきもちだ。 子ども相手に。 「いいじゃない。夜は二人で過ごせるようにわざわざ時間選んでくれたのよ?」 「んじゃ、二人で過ごそう。」 ムウはそう言って花束をマリューに押し付け、そのまま彼女を横抱きにした。 きゃっとマリューは声を上げたが、ムウはそのままずんずんとベッドへ歩いていく。 「誕生日おめでとう、マリュー」 そう言ってベッドへマリューを降ろし、唇を寄せたとき―― こつん、とムウの後頭部に何かがあたる音がした。 後ろを見ると、手のひらサイズの球体がピョンピョン跳ねている。 「あら、ハロだわ。」 ハロはそのままマリュ―の手のひらに収まった。 「アスランくんが作ってくれたらしいのよ。キラくんが預かってきてくれたの。」 そう言って、マリュ―はハロと戯れはじめた。 ムウが心の中でアスランに悪態をついたのは言うまでもない。 End |
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