■ kana様のフリー小説 ■
Happy Birthday "Mwu" |
バースディープレゼントは、何がいいかしら・・? マリュー・ラミアス・フラガは、嬉しい悩み事をしていた。 戦争が終わり、二人はオーブに身を寄せていた。 先月・・マリューの誕生日にムウは、彼女にプロポーズし、二人はめでたく結ばれた。 最初は、結婚式も小さな教会でひっそりと・・と考えていた二人だったが カガリやミリアリアを筆頭に『盛大な結婚式を!』という企画が計画され、結果、大パーティーが開かれた。 二人の結婚式を名目にみんなは久しぶりに集まり、騒ぎたかっただけなのかも知れないが・・ みんなからの盛大な祝福を受け、二人は改めて仲間の素晴らしさを感じた。 あれから、約1ヶ月・・ 11月29日は、愛しい彼の誕生日・・マリューは、結婚し初めて迎える記念日のプレゼントに頭を悩ませていた。 何が欲しいかと聞こうかとも思ったが、やはり彼の驚く顔、そして喜ぶ顔が見たい。 手編みのセーター・・洋服・・財布・・犬が飼いたいって言ってたわね・・ しかし、今ひとつこれ!というものが無い。 この記念日に相応しいプレゼントは、無いかしら・・? 色々、考えていたマリューは、ふと一年前の出来事を思い出した。 一年前は、まだ戦争の真っ只中で誕生日どころでは無かった。 ある日、艦長室で彼とミーティングをしていた時だった。 話も大体終わり、少し雑談を始めたときにマリューは、目の前にあるパソコンに目を留めた。 パソコンの画面には、ムウ・ラ・フラガのデータが映し出されていた。 さっき、彼がここを訪れるまでにマリューは、クルーのデータ整理、及び名簿を作成していた。 その画面のある所で目が留まった。 Birth data:C.E43.11.29 誕生日・・11月29日・・って・・ 「少佐・・今日、お誕生日ですか・・?」 マリューの問いかけにムウは、不思議そうなそして、嬉しそうな顔をした。 「えっ・・なんで知ってんの?」 「えっ・・ああ、先程クルーのデータ整理してまして、今、少佐の画面が開いていたものですから・・」 マリューの答えに少し、がっかりした顔になる。 「ああ・・そういうこと・・ね・・」 「おめでとうございます。あ、でもプレゼントって用意出来てませんけど・・」 戦争中だから、もちろん、プレゼントなど用意できるわけが無いのだが・・ マリューの少し、間抜けな言葉にムウは笑みをこぼした。 「プレゼントって・・艦長・・まぁ、俺ももう28だし・・誕生日喜んでいる年でもないしなぁ」 「でも、戦争が始まる前には、素敵な彼女に祝ってもらってたでしょう?」 マリューの言葉にムウは、更に落ち込む。 (はぁ・・全然、気付いてないよ・・この人は・・) 「ま・・まぁ・・程ほどにね・・」 マリューは、目の前の男が何故、落ち込んでいるのか見当が付かなかった。 「じゃあ・・俺の誕生日を気付いてくれた艦長さん、祝ってくれる?」 「えっ・・はい・・いいですけど・・どうやってお祝いを・・?」 「お願い・・聞いてくれるかい?」 「お願い・・ですか・・?変なお願いじゃないでしょうね?」 マリューは、少し警戒をする。果たして彼がまともなお願いをしてくるのだろうか。 「そんなに、警戒しなくても・・俺の名前を呼んで欲しいんだ。」 「少佐の・・?」 「ああ。」 そんな簡単なお願い・・?と思いながらもマリューは、とりあえず彼の名を呼んだ。 「・・フラガ・・さん・・」 思わずムウは、ずっこけた。 「あの・・ファーストネームの方を・・・」 彼女が苗字の方を呼ぶなんて・・あまりの天然ぶりにクラクラする。 「ああ・・ファーストネームですか・・?そう言ってくれなきゃ・・」 少しマリューは、赤くなったがコホン・・と小さく咳払いをしてもう一度、彼の名を呼んだ。 「・・ムウ・・」 少し恥ずかしそうに呼ぶ、彼女が可愛い。 「もう一度・・もう少し感情を込めて呼んでくれる?」 「感情を込めてって・・ムウ・・」 「最後にもう一回・・そうだな・・目を瞑って・・感情を込めて呼んで欲しいな・・」 「もう・・最後ですよ・・?」 そう言ってマリューは、両目を閉じ心を込めて彼の名を呼んだ。 「・・ムウ・・」 目の前の彼女をムウは、愛しい目で見つめていた。 その時、両目を瞑っていたマリューは、自分の唇に触れる温かいものを感じた。 はっ!と目を開けると目の前には満面の笑みの彼がいる。 驚いて2、3歩後ろへ下がり、彼から離れた。咄嗟に何が起きたか分からない。 するとムウは、ゆっくりとマリューの唇に自分の人差し指をつんと触れて「さんきゅ・・」と、優しい笑顔で告げた。 あの時のことを思い出しマリューは、ふふ・・と微笑んだ。 初めてのプレゼントって・・あの時のキスなのかしらね・・? 平和なときを二人で過ごせることを改めて嬉しく思った。 11月29日・・その日マリューは、休暇を貰っていた。 モルゲンレーテでの技術開発の仕事やオーブの代表の一人となったカガリの補佐など多忙な毎日を送る彼女であったが、今日は特別の日だ。 パイロット養成所の教官となったムウにも今日は、早く帰って来てくれるよう言っている。 午前中に夕食の買出しと、注文していたムウへのプレゼントを取りに出かけた。 彼へのプレゼントは、腕時計に決めた。人間の体温と僅かな振動がエネルギーとなり、肌身に着けていると永遠に動き続けるようになっている時計。 しかもデザインは、マリューがすべて注文し、オーダーメイドして貰った世界に一つしかない時計。 これから二人で歩む時間を、その時計が止まるその日まで共に刻んで欲しいという思いで選んだ。 時計屋を出て、次は夕食の材料を買いに行く。 この日、マリューの体調は思わしくなかった。正確に言えば、ここ数日間。 なんだか、体がだるい。微熱もあるようだった。風邪の初期症状かと思われた。 しかし、今日の記念日の為にそんなことは言ってられない。 マリューは、いそいそと買い物を済まし、家路へと急いだ。 家に着いた彼女は、早速、料理に取りかかった。パンを焼き、彼の好物のビーフシチュー、シーフードのマリネ、マッシュポテトやロブスターのグラタンなど次々に調理していく。 手際よくこなしていくが少しずつそのスピードは、遅くなっていった。 体調が悪化してきたからだ。 (いやだわ・・どうしたのかしら・・?) 気分も悪くなってきた為、マリューは、ソファに腰をかけた。 その時、急に目の前が真っ暗となり、マリューは何が起きたか分からぬまま闇の中へと意識が落ちていった。 ムウは、その日愛する妻との約束どおり、いつもより数段早く帰宅した。 仕事も残っていたが今日は、特別だ。明日、頑張ればいい。 ピンポーン。インターフォンを鳴らす。 いつもなら自分で鍵を開けて入るが、今日はマリューが家にいるはずだ。 しかし、中からの応答は無い。もう一度、鳴らすがやはり、応答は無かった。 不思議に思いながらも鍵を開け、中に入った。電気がついている。 「あれ・・やっぱり、マリューいるんじゃん!マリュー?」 ムウは、声をかけながら辺りを見回した。彼女の姿を探しながらリビングへと進む。 そして、目にした現実に彼は、血の気が引いていくのを感じた。 「マリュー!!」 目の前には、ソファで気を失っている最愛の妻がいた。 「マリュー!マリュー!!」 彼女を揺さぶり、何度も呼びかけるが目を覚まさない。 息はしている・・ムウは、マリューを抱き上げ、急いで病院へと車を走らせた。 診察をしている間、ムウは廊下で待っていた。 どれくらいの時間が経ったのか・・ 実際、廊下にいた時間は僅かだったのだが、彼にとっては気が遠くなるような長い時間だった。 やがて、診察室より看護婦が姿を現した。中に入るよう、うながされる。 「ムウ・・」 ベッドの上では、気が付いたマリューがこちらを見つめている。 その表情は、優しく微笑んでいたので、ムウは安心し少し目頭が熱くなった。 「貧血から来る意識の消失です。体には、異常はありませんよ。」 医師の言葉にムウは、ほっと息を付いた。しかし、ムウには疑問が残る。 「しかし、先生・・貧血って病気なんじゃ・・?」 ムウの言葉に医師は、笑顔で答える。 「病気からくる貧血じゃありませんよ、お父さん。」 えっ・・? 医師の言葉の意味がすぐには、理解出来ない。 しかし、少し違和感のある言葉を耳にしたような気がする。 「おめでとうございます。奥さん、妊娠なさってますよ。2ヶ月です。」 やっぱり、医師の言葉にすぐに反応出来ない。ムウは、ゆっくりマリューを見た。 少し涙ぐんだ、とても温かい彼女の笑顔。 「ムウ・・パパですって・・」 彼女の言葉に胸が熱くなっていく。ゆっくり彼女の傍に行き、手を握る。 「マリュー・・俺・・本当に・・?」 ムウの言葉にマリューは、優しい表情で頷いた。 「・・家族が増えるわ・・ムウ・・」 マリューの言葉にムウは、ぴくっと反応した。彼にとって『家族』という言葉は、辛い思い出でもあった。 記憶の中の両親からは、優しい愛情を注いでもらった覚えが無い。 いつも厳しい父と、父を気にかけるあまり、辛く当たるばかりの母だった。 その両親も自分がまだ幼い頃に他界した。 だから自分は、家族の絆など知らない。最後は、己一人だと冷めた感情があった。 しかし、彼女と出会って、初めて知る感情。 言葉でしか知らなかった『家族』は、いつの間にかムウにとって夢であり憧れとなった。 彼女と共に生きていけたら・・そして、二人の子供をこの手に抱けたら・・どんなに幸せであろうかと。 マリューの指がムウの目元にそっと触れた。 愛しげに見つめる彼女の表情そして、温かい指先・・ その時、ムウは初めて知った。自分が泣いていたことを。 「・・ありがとう・・・」 愛を教えてくれて、ありがとう。 優しさを教えてくれて、ありがとう。 そして家族を与えてくれてありがとう。 今の気持ちの全てをこめて、愛しい妻の頬にキスを落とした。 マリューは、入院する必要もなかったので二人そろって家路に着いた。 冷めてしまった料理を温め直そうとする彼女を制止し、ムウによって料理は、仕上げられた。 この日の為に用意されたワインは、お腹の赤ちゃんのことを考えてオレンジジュースに変更となる。 「じゃあ、改めて・・ハッピーバースディー、ムウ・・」 二人は向かい合い乾杯する。オレンジジュースの入ったワイングラスは、美しい音を響かせた。 「ありがとう、マリュー・・」 「ムウ・・これ・・プレゼント・・」 マリューは、彼の為に選んだプレゼントを自分のこめた気持ちと共に贈った。 これからも、ずっと一緒に時を過ごせますように・・と。 「ありがとう、マリュー。ずっと、ずっと一緒に過ごそう。この子も一緒に・・ね・・」 マリューの隣の椅子に移動したムウは、優しくマリューのお腹に手を触れた。 「ありがとう・・素敵な誕生日プレゼントを・・」 ムウの言葉にマリューは、幸せそうに微笑んで彼の頬にキスした。 ハッピーバースディー・・愛しい貴方・・ Fin |
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[ kana様のコメント ] 少佐のお誕生日を祝してUPしたSSですv マリューさんのお誕生日の話の続きとなるストーリーでして・・ "Murrue"がプロポーズ編ならば、"Mwu"はご懐妊編と言った感じでしょうか(笑)。 またしても長い話になりました(汗)。 私って短くまとめられないということがよく分かりました(笑)。 誕生日に妊娠が発覚なんて出来すぎっ!と思われる方もいらっしゃるでしょう・・ あまり気にしないでください。管理人は、ドラマティックな話が好きなので/// きっと少佐は、今まで辛い思いをたくさんしてきたと思うので これからは、その何倍も幸せになって欲しいです。 |