Summer Christmas ~another famiry~ 



クリスマスの日、ディアッカは近くまで送ってもらったムゥと別れてミリアリアといつも待ち合わせをしていつCafeへと急いだ。
街中がクリスマスの音楽であふれかえっていた。
しかし、ここは南国。熱いし雪もない。
ディアッカはやっぱりこの国のクリスマスはムードというヤツに欠けていると思った。
プラントでは必ず雪は降るようになっているからだ。
彼にはどうにもこの夏の気候のクリスマスが納得できない。
だが、これが自然の力だといわれたらそれまでである。
オーブは島国なので、海岸沿いの景色はとても良い。
だからといって夕日に向かって恋人が「merry christmas!愛してる」とささやいたところで普段とあまり変わらない光景のような気がする。
だからといって、逆に彼女をプラントへ招待することは今の情勢ではまだ難しい。
かといって「ホワイトクリスマス」が楽しめ、且つコーディネーターが入国できる国は地球にない。

「はぁ、ぶつぶつ言っても仕方ない」ディアッカはため息を吐きながらCafeの前まで来ていた。
OPENなCafeにはすでにミリアリアは来ていてコーヒーを飲んでいた。

「よう。遅れて悪ぃ」とディアッカは椅子に座って手を合わせた。
「別に良いよ」ミリアリアはつっけんどんにそう言うとコーヒーを一口飲んだ。
いつも合うときとは話す雰囲気は同じだが、見た目がちょっと違って見えた。
ディアッカはマジマジと彼女を眺めていた。

「何よ」そんな彼の視線を感じたミリアリアはちょっとにらんで彼を見た。
「あ、いや、今日はなんか雰囲気が違うなと思ってさ」
「違ったら悪い?」
「な・何もそんなこと言ってないだろ。あ、髪型を少し変えたんだ」
「変えたらいけない?」
「いや、似合ってて良い感じだよ。ってかなんでこうも会うなりつっけんどんなわけ?」
「べつにぃ・・・」
「別に・・・何だよ」
「アンタ、昨日こっちに来たんでしょ?夕べはどこに泊まったの?いつものホテルに電話したら今日は予約がありませんっていわれて・・・・・」
「あ〜、そのこと?システムエラーで予約できてなかったんだよ。参ったぜ全く」
「ふ〜ん、で?」
「おっさんの家に泊まった」
「フラガさんの家に?」
「うん、今日帰るからっていったらあの子に泣きつかれて大変だったけど」
ほっとした顔でコーヒーを飲むミリアリアを見てディアッカはちょっと嬉しくなる。
にやける顔を抑えつつ、ちょっと意地悪にいってみる。
「ふ〜ん、ヤキモキしてくれてたんだ」
「悪い?」
「だから、なんでそんなつっけんどんなわけ?別に悪いっていってないだろ?」
「なんで・・・・・・・」
「はい?」
「何でうちに連絡くれなかったのよ」
だんだんとミリアリアのご機嫌斜めの理由が明らかになってきてますますディアッカは嬉しくなる。
思わず抑えきれずににやっと笑うと、彼女にめざとく見つかり逆にまたにらみ返された。
ディアッカは”あぁもぅ”とおもいつつ連絡したら泊めてくれたのかと彼女に問うと案の定”いや・・それは・・”とお茶を濁された。
彼はミリアリアに連絡しても、彼女に家に泊まれないしたぶん彼女もムゥの家に連絡するだろう。
それが分かってたからあえていきなりムゥの家に連絡したことを告げた。
ミリアリアはそう言われることは分かってたのだろう。「それでも・・・」と何かを言いかけた。
その先を察したディアッカはもう嬉しくて嬉しくてたまらないのだが、そこはぐっと抑えて、「ごめん。今度こんな事があったらお前にも連絡をする」といってもう一度手を合わせた。
ミリアリアも納得したようでようやく笑顔で答えてくれる。
その笑顔を確認してディアッカは席を立った。
「いこうか。確か今日は見たい映画があるっていってただろ?」
「うん、あ、上映時間まであと15分しかない」
「映画館まで間に合うか?それとも次の回にする?」
「ううん、間に合わせよう。今回は指定のチケットを取ってあるから」
「へ?予約?お前にしては珍しいジャン」
「悪かったわね。並ばないと見られない映画だし、それに一応クリスマスプレゼントのつもりなんですけど?」
「あ、いや・・・・。サンキュ。じゃぁ急がないとな」
二人はCafeをでて映画館へ向かう。その道すがらディアッカは一つお願いをする。
「あのさぁ、映画終わったらおもちゃ屋に付き合ってよ」
「え?なんで・・・・・?あ、あの子のプレゼント?」
「うん、さすがに泊めてもらった上にあんなに泣かれてはなぁ」
「何もしないわけにもいかないか。分かったわ、明日にでも届けてあげる」
「いや、バイク便か何かで今日中に届けてもらうわ」
なに買って良いかわかんないんだよと頭を抱える彼を見てミリアリアはふふっと笑う。
ミリアリアへのプレゼントはそのあとになってしまうなぁとつぶやく彼に
「デートの相手を後回しにされるのはムカつくけど、あの子相手じゃ仕方ないわね」と笑う。
「サンキュ。そのあとは”あなた様”の仰せのままにってね」
「わかった。ってあー!急がないと」
時計を見て慌てるミリアリアの手をディアッカはぐっとつかんで走り出す。
「急げ!走るぞ」
「うん、お手柔らかにね」ミリアリアにそれに答えてディアッカの手を握り返す。

二人は映画館までの道を思いっきり走り出した。


fin


チアキアスカ様から頂きました。三咲版クリスマスSS・その頃のディアミリ話です。
ふたりの微妙な距離感がとても素敵です。ありがとうございました



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