■ 杏子様からの頂もの(フリー小説) ■
対峙していたドミニオンから、ローエングリンが容赦なく放たれた。 「回避!」 「間に合いません!」 これまでか・・・っ! 覚悟を決めたマリューが、正面に広がる宇宙を睨み付けた、その時。 着艦するはずのストライクが、アークエンジェルの前へ飛び出した。 光の矢に貫かれ、愛する人の乗った機体はマリューの目の前で閃光に包まれた。 |
君とつくる物語 |
「マリュー。ちょっと休憩しないっかなぁ〜?」 ムウが、ドアからひょこっと顔をのぞかせた。 その手には、二人分のコーヒーとマリューの大好きなカフェのクッキーという貢ぎ物。 何しろマリューときたら、締切り間近の小説の執筆で、朝から部屋にこもりきり。 せっかくの休日にかまってもらえないのが寂しいムウは、なんのかんのと用事をつくっては、仕事部屋のドアを開ける。 その度に、ジャマしないで!とマリューに怖い顔で叱られているのだが。 「ム〜ウぅ〜・・・。」 そのマリューが、ベソかき顔で振り向いた。 愛しい妻のその様子に、ムウがどどどっと駆け寄る。 手にしていたものを注意深く脇のテーブルに置きーーー 以前、仕事机に置いたコーヒーをひっくり返して、えらく叱られたためーーー よしよし、と頭を撫でる。 「どした? ネタに詰まったのか?」 「違うのぉ〜。ムウの乗ったストライク、爆発しちゃった・・・。」 涙声で訴えるマリュー。 どれどれ、とムウは、机の上から書きかけの原稿を取り上げて読んでみる。 「なるほどなぁ・・・。」 「そうなの〜。」 「わざわざ悲しい話を、泣きながら書かなくても・・・。」 小さくしゃくりあげるマリューを苦笑まじりになだめると、物書きとしてのプライドが許さないのか、マリューは「だって・・・」と口を尖らせた。 そんな顔も可愛くてたまらなくて。マリューの目線まで腰を屈めると、 「俺達の名前を使った小説なら、ハッピーじゃなくちゃ。現実の俺達みたいに、さ。」 ムウは、ニッと笑ってみせる。 鼻をクスンとすすりながら、漸くマリューも笑顔になった 「ん、そうする。」 「よし。じゃあ、一旦休憩。」 仲良く並んで、お気に入りのソファに腰をかける。 大好きなクッキーをつまみながら、二人で小説の構想を練り直す休日の午後。 そうして生まれた作品『機動戦士ガンダムSEED〜ムウとマリューの物語〜』が、第○回某文学賞を受賞。 ーーー 大人の恋愛を通じて、生きることの素晴しさを語りかける本作品。戦いの合間に描かれている、筆者、マリュー・ラミアスの実生活を投影させたような、ほのぼのとした日常描写は秀逸である。 という作品評とともに書店に並ぶのは、もう少し後の話。 Fin |
[ 杏子様のコメント ] 例によって、本編の補完SS(問題の49話!)を書いていたのですが、 「どうせならぶっ飛んでしまえーーっ!」ということで、禁じ手のパラレルSSです。 泣き虫マリューに、ひたすら甘いムウ。あ〜もう、お幸せに!(笑) |