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† リクエスト †
戦後のほのぼのとした幸せなフラマリュ


綺麗に晴れた青空。心地よい春の風。
「きゃー!」
青々とした芝生の生えた公園に、子供達は歓声を上げながら駆け込んでいく。
「とーさんたちが見えないところに行っちゃ駄目だぞー?」
小さな背中を笑顔で見送りながらムウがそう言うと、「はーい」と優等生な答えが返ってくる。
「ホントに聞いてるのかねぇ」
くすくす笑いながらそう呟くと、「大丈夫でしょ」と軽く右腕を叩かれる。
「あの子たち、ああ見えても結構慎重派なのよ?」
どっちに似たのかしらね、と微笑むのに「少なくともマリューじゃないと思うけど?」と指摘すると、軽く頬を抓まれた。


く つ ろ ぎ の ひ と と き

半年振りにプラントから戻ってきたムウが、久しぶりの休みにどこに行きたい?と子供達に聞いたのが昨日のこと。
「お弁当を持ってピクニック!」という、実に可愛らしい要望を聞き、ムウとマリューは街の郊外にある海の見える丘にやってきた。
芝生の上に広げたシートの上にのんびりと座り、言いつけどおりにムウの視界の内でじゃれている二人を見ていたら、隣に腰を下ろして同じように子供達を見ていたマリューが不意に口を開いた。
「疲れているでしょう、ムウ。昼寝しててもいいわよ?」
「んー?いや、大丈夫だよ」
それよりコーヒー頂戴?と言えば、少しだけ眉を顰めたマリューはバスケットから水筒を取り出す。その中身をカップに注ぎながら、「昨日の夜も、あの子達に抱きつかれて、ちゃんと眠れていなかったみたいだし」と言われて、ムウは苦笑した。
手渡された温かいコーヒーに口をつければ、じんわりと体の中にその熱が広がっていく。
「それ、気づいてたって事はマリューもちゃんと寝てないんじゃない?」
「それ見てたら、寝ちゃってたもの、私」
だから私のことよりあなたのこと、とほんの少しだけ厳しい顔を作って見上げてくるマリューに、それじゃあ、とムウはにっこり笑った。
「膝枕」
「……はい?」
ムウの短い言葉に、マリューは眉を寄せて首を傾げる。くるくると表情を変えるマリューが、走り回ってる子供達によく似ていて、親子だなあなんてことをムウは思いながら、
「だから膝枕して?そしたらちょっとだけ寝るからさぁ」
ぽんぽん、とマリューの膝頭のあたりを軽く叩くと、途端に真っ赤な顔になる。
「だってさ、」
何かを言おうとして口を開きかけたマリューを遮るようにムウは言葉を続けた。
「こんなふうに一緒にいるの、ひさしぶりなんだし」
その言葉に、マリューは口を噤み、それから頬に笑みを浮かべた。
オーブ外交使節団の護衛としてプラントに派遣されていたムウは、この半年の間、一度もオーブに戻ってこれなかったのだ。
子供達と一緒に寝るのも遊びに行くのも、そしてマリューにこうして触れるのも半年振りなのである。
触れていたい、と思ってもいいじゃないかと告げると、「しょうがないわね」と優しい口調で呟いて、マリューはぐいとムウの頭を引っ張った。そしてそのまま自分の太股にムウの頭を乗せる。
「お昼ご飯までよ?」
そう言って、マリューは静かにムウの前髪をかきあげ、その額にそっと唇を落とした。
「りょーかい」
くすぐったさを感じながら、ムウは静かに瞳を閉じる。
子供特有の甲高い笑い声と、そしてそこに混じる静かな子守唄をバックに、ムウはすぐに眠りに落ちていった。


こっそりと子守唄を歌っていたら、すぐにムウの体から力が抜け、静かな寝息が聞こえてきたのでマリューは歌うのをやめた。
安心しきった表情で熟睡しているムウの寝顔に視線を落としてそっと微笑む。
一緒に暮らすようになってから何度この寝顔を見てきただろう。戦時中は近づけばすぐに気配を察知して目を覚ましてしまうから、なかなかその寝顔を見ることはなかったのに。そう思うと、不思議なものだなと思う。
戦争で失ったものもあれば、こうして戦争がなかったら得られなかったものがある。
背後から静かに近づいてくる二つの気配の持ち主達も、戦争でムウと出会わなかったら、生まれていなかったかもしれないのだ。
「……とうさま、ねちゃったの?」
「たの?」
背中越しに声をかけられ、マリューはゆっくりと振り返る。音を立てないように、と気を使っている子供たちに微笑みかけて手招きすると、嬉しそうに近づいてきた。
「ねてるね?」
「ね?」
そう言って顔を見合わせる子供たちに、口の前に指を立ててマリューは笑った。
「お父さん、ちょっとだけおねむなのよ」
だからお昼ご飯を食べるまではそっとしておいてあげましょうね、と告げれば、子供たちは「りょーかい!」と小声で答え、また走っていってしまった。
「……しっかりうつっちゃってるわね」
そのうちシャツの袖をまくりっぱなしになったらどうしようかしら、とマリューは微笑みながらそんなことを思った。


End...


キリ番7万をゲットされたaila様リクエスト「戦後のほのぼのとした幸せなフラマリュ」より、戦後ほのぼのムウマリュファミリーを書かせていただきました(笑)。
ファミリーの「どっちに似てる?」を書いた後だったので微妙にそのへんも引きずっているような話になりましたけれどいかがでしょうか?(というか季節感ゼロですみません…もう春じゃないし/苦笑)

■ ご申告ありがとうございました!aila様 ■



last update 2004/06/09