■ キリ番 30,000 getのちゃな様へ ■

† リクエスト †
戦後に二人で旅行に行って、マリューさんに怒られちゃう兄貴。
でも最後はラブラブ。


 や き も ち
空港に降り立ち、マリューは「うーん!」と大きく伸びをした。
狭い席に押し込められる飛行機での長時間の移動はやはり辛い。
「そう考えると戦艦ってやっぱり広いのよねぇ…」
ふぅ、と職業柄民間飛行機と軍の戦艦の性能比などについてつらつらと考えていたマリューは、背後からぽんと肩を叩かれ振り返った。
「なにぼんやりしてんの?」
「ムウ」
少し呆れた表情で見下ろしてくるムウを振り仰ぎ、「なんでもないわ」と笑う。
首をかしげたが、特にそれ以上つっこんでくることはなく、ムウは左腕でマリューの肩を抱いたまま歩き出した。反対の右手では、ふたり分の荷物が入ったトランクを引いている。
ムウに促されるまま歩き出したマリューは、「荷物、ありがとう」とムウへ言った。
それに、にこりと微笑み、ムウは不意に視線をマリューから前方へと向けた。
「お迎え、来てくれてるみたいだぜ」
「え、ホント?」
ムウの言葉に、マリューもきょろきょろとあたりを見回す。すると、ゲートの外側、右斜め前方あたりで手を振る一人の女性の姿が目に入った。
きりっとした表情に、今は少しだけ口元に笑みを浮かべている年下の友人だ。直接会うのは、ムウとマリューの結婚式以来だろうか。
笑って手を降り返し、マリューはムウを急かせて少し足早に歩きだす。
入国管理のゲートを潜り抜けると、「マリューさん!」と横から声をかけられる。
「お久しぶりです、お元気ですか?」
几帳面に挨拶をする彼女に、マリューは微笑んだ。
「久しぶりね、ナタル。会えて嬉しいわ!」
「よぉ、ナタル。元気かー?」
後ろからやってきたムウもひょいと手を上げて笑いかけた。そのふたりに、「お変わりないようですね」とナタル・バジルールは笑い返した。



事の発端は、唐突なカガリの言葉であった。
『フラガ中佐、ラミアス中佐。二人とも今月末の10日間、夏休みだから休んでいいぞ』
週の初め、午後一番の億劫な会議の最後。
終了の言葉と同時に立ち上がったムウとマリューへ『ちょっと待った』と声をかけたカガリに唐突にそう言われ、二人は『はぁ?』という顔で年若き指導者を見た。
『だから、夏休み』
『……俺の記憶が間違ってなければ、今は10月で、秋といわれる季節じゃないかと思うんだが』
ムウの最もな意見はあっさりとカガリに切って捨てられた。
『だってふたりとも、結婚式あげてから新婚旅行にも行かずにずーっと仕事してるだろ?今月末なら会議もなくてわりと暇だから。せっかくだから休んでどっか旅行にでも行ってこいよ』
もちろん、出かける前には色々やってもらわないと駄目だけどなーと笑うカガリに、ムウとマリューは苦笑した。
『じゃ、ありがたく休ませてもらうわね?』
そう言ってマリューとムウはどこに行こうかと考え―――折角だからナタルやノイマンといった、普段なかなか会うことも出来ないふたりに会いにいこうと決め、事前にナタルに連絡を入れた。
『それでは空港までお迎えに行きますから』
通信パネルの向こうで微笑むナタルに、マリューは『仕事、忙しいんじゃないの?』と告げると、『休みくらいなんとかもぎとります』となんとも頼もしい台詞をさらりと返してきた。
ではお言葉に甘えて、と笑ったマリューは『できたらノイマン君と一緒にいらっしゃいね♪』としっかり釘をさしてナタルを絶句させていた―――



ナタルやノイマンが所属する地球平和維持軍―――旧地球連合軍―――の本部は現在、バンクーバーにあった。以前の本部であったアラスカのJOSH-Aは復旧の目処がつかず、ビクトリア基地も破壊されたマスドライバーの修復作業真っ只中にある。そこで、ビクトリアに程近いバンクーバーに本部が移されたのだ。
「うー、けっこう涼しいわねぇ」
空港のビルから外に出たマリューの第一声に思わずナタルが吹き出した。
「これでも今日は温かい方ですよ?」
「ええー!そうなのぉ!?」
10月下旬のバンクーバーは紅葉の美しい時期ではあったがその分涼しい。地元の人間にしてみればそれほどでもなくても、オーブの気候に慣れていたマリューとムウは身を縮ませて寒さを堪えていた。
「とりあえずお泊りになるホテルまで荷物を置きに行きますか、フラガ中佐」
二人の後ろから着いてきていたムウへナタルが言った言葉に、ムウは苦笑した。
「おいおい。休暇中だからさあ、『中佐』はないんじゃないの?」
「あ……そうですね。ええと、じゃあ………………………フラガさん?」
しばらく迷った末に口にした呼びかけに、マリューが吹き出した。
「ナタルー?あのね、フラガさん、って私もそうなんだけど?」
「え、あ、そうですね」
そういえばそうだ、とナタルは真面目に考え込む。その姿を見て、マリューとムウは「相変わらず真面目だなあ」と目を見合わせて微笑む。
「―――そこまで悩まなくても、『ムウさん』でいいんじゃないですか?」
背後から唐突に声をかけられ、三人は一斉にその声のほうを振り返ると、
「お久しぶりです」
にこりと笑ってそこにいたのは、私服姿のアーノルド・ノイマンであった。
「ノイマン?久しぶりだなー。お前いつからそこにいたのさ」
「ついさっきですよ。一緒にお出迎えしようと思ってたんですが、軍に呼び出されたんで。そっちを片付けてから来たんです」
「ノイマン君、元気?変わりない?」
「ええ、マリューさん。ま、仕事は忙しいですけどそれは皆さんも一緒でしょう?」
「ふふ。そうね」
ニコニコと会話を続けるノイマンは、ナタルに「遅れてすみません」と少し頭を下げる。
「―――よく間に合ったな」
ノイマンに向けた表情をやわらかくしたナタルは「お疲れ様」と彼の腕をぽんと叩く。それに優しく微笑んだノイマンはあっさりと、
「俺じゃないと駄目なところだけやってきて、あとは押し付けてきました」
と告げて、ムウとマリューを驚かせた。一方のナタルは「さすがだな」と笑っている。
なんだかこの半年間でやけに要領よくなったふたりの姿に、ムウとマリューは顔を見合わせて苦笑を浮かべた。


とりあえずホテルへ向かいチェックインを済ませ、荷物を預ける。
その後、ロビーで寛ぎながらどこに行こうか―――と話していると、ナタルのバックから通信音が鳴り響いた。
眉を顰めて、ナタルはバックを開けて通信機を取り出した。その発信者名を確認して不機嫌そうな表情になる。
「こちら、バジルールだ」
その顔は、先ほどまでの柔らかいものではなく、元地球連合軍ナタル・バジルール中佐としての厳しいものになっている。それを見ていたムウとマリューも、自然と顔を引き締めていた。
二言、三言会話を交わし、ちらりとノイマンを見てからナタルは「了解した」と答えて通信を切る。そしてはーっと深い溜息をついた。
「なあに?戻ってこいって?」
申し訳なさそうな表情をしたナタルが何か言う前にマリューがそう聞くと、「ええ」とナタルは頷いた。
「なんでも緊急に処理しなければならない案件があるとかで―――ノイマン中尉、」
肩書きつきの呼びかけに、ノイマンも自然と仕事中のモードに切り替わる。
「はっ」
「君も私と共に戻るようにと、本部からの通達だ」
「わかりました。車拾ってきます」
そう言って、ノイマンはムウとマリューに「すみません」と苦笑を浮かべてホテルのロビーから足早に立ち去っていった。
「そういうわけですので…すみません、おふたりとも」
深々と頭を下げるナタルに、マリューはその肩を叩いて笑った。
「いいのよ、お仕事じゃ仕方ないでしょ?わたしたち、しばらくここに滞在する予定だから暇が出来たら連絡頂戴?」
「わかりました。必ず」
顔を上げたナタルは、かすかに微笑を浮かべて「それでは失礼します」と立ち去った。
そのきびきびした後姿を見送りながら、ムウはマリューを見た。
「さあて。どうしようか?」
ひょい、と肩に手を回されたマリューは、しばし考えたあとにこう提案した。
「とりあえず、お茶でも飲んで一休みしながら、ガイドブック見ましょうか?」


† † † † † † † † † †


「んー。のんびりと街中を散歩でもする?」
エスプレッソを飲みながらガイドブックを見ていたムウは、それをテーブルに戻して向かいに座るマリューに声をかけた。
「そうねぇ…1日目だし、のんびりしましょうか……あ、でも、このお店行ってみたいな……」
美味しそう…とぶつぶつ呟きながら真剣にガイドブックを読むマリューに、「コーヒー冷めるぞ」とムウは苦笑した。
考えてみれば、ふたりで一緒に観光目的で遠出するのは初めてだなあ、などと思いながら、ぼんやりとマリューを眺めていた。
長くなった髪の毛をかきあげながら、ガイドブックの文字を追い、「ここもいいわね」「あ、でもこっちのほうが」などと、仕事で書類を見ているとき以上に真剣な表情を見せるマリューは、見ているだけでなんとなく楽しい。
そんなことを考えていると、不意にマリューが視線を上げてムウを見た。
「ん、なに?」
「………なに、ってこっちの台詞なんだけど………」
じーっと見ているから用があるのかと思った、と言うマリューに「なんでもないよ」と笑いながら、ムウは席を立った。
「ちょっとトイレ行ってくるな。時間、あるんだからゆっくり考えるといいよ」
ひらり、と手を振って席を離れると、「うん」と満面の笑みを浮かべてマリューが頷いた。



「あの……」
喫茶店の一番奥にあるトイレから出てきたところで不意に声をかけられ、ムウは吃驚して声が聞こえてきたほうを振り返った。
そこにいた、綺麗な黒髪を丁寧に結い上げた、20歳になるかならないかくらいの女性が、ムウと視線を合わせてにっこりと微笑む。
「ムウ・ラ・フラガさん、ですわよね?」
「えーっと、まあ、そうだけど」
ずばりと断定口調で名前を言われて、ムウは内心「困ったなあ」と呟きならがも肯定した。
元地球連合軍エースパイロット、モビルアーマーもモビルスーツも自在に乗りこなすグリマルディ戦線の英雄エンデュミオンの鷹、そして―――奇跡の生還者。と名前に尾鰭背鰭のついた噂が主に元地球連合軍支配下の国々で大々的に流れている、ということは以前ノイマンに聞いて知っていた。ムウにして見れば、知らないところで名前と顔が一人歩きしているので「勘弁してくれよ」と言ったところだが。
おそらくこの少女もその噂を聞いたひとりなのだろうか、と考えていると、「やっぱり」と少女は目を煌かせながら楚々と頭を下げた。
「わたくし、レナンディア・トレラ・ブルーフィールドと申します」
少女の名乗った苗字に聞き覚えがあり、ムウは眉を顰めた。
ブルーフィールド、とは終戦直後、アークエンジェルの戦犯問題を扱うに当たり、早くからアークエンジェル側の正当性を認めて色々と便宜を図ってくれた高官の苗字と同じである。おそらく、親族かもしくは娘といったところだろうか。そのムウの疑問はすぐに解消した。
「お会いできて光栄ですわ。フラガ様のことは父からもよく聞いていましたの。ナチュラルの中でコーディネイターに匹敵するほどの優秀なパイロットだと」
案の定、娘であった。やばいのに声をかけられたかなー、とムウはこっそり思う。いちおう世話になった将軍の娘となれば、なおざりに対応するわけにもいかない。
「写真でお顔を見たことはありましたけれど、実物はずっとハンサムですわね」
「あ、それはどーも」
とりあえずうまくあしらって早々に立ち去りたいんだけどなあ、と頭の中で考えていると、すすすと近づいてきたレナンディアが、不意にムウの腕に手をかけ、身を寄せてきた。
「え、ちょっと、お嬢さん?」
初対面の人間―――しかも異性に対する行動としてはどうかと思われる行動に、いささか慌てたムウは少女を引き離そうとするが、意外にがっちりと力を込めているらしく、なかなか離れてくれなかった。
「ここで出会ったのも何かの縁ですわ。どうぞわたくしたちのテーブルにいらして下さらないかしら。みんな、あなたのファンなんです」
ムウが肯定すると信じて疑わないといった表情で微笑むレナンディアに、何と言ってムウは断ろうかと一生懸命考えた。
いくら濡れ衣は晴れたとはいえ、未だアークエンジェルについて不審を抱いている元地球連合軍の高官は数多く残っている。彼女の父親の発言力のことを考えると、ここで少女の機嫌を多いに損ねるようなことは慎んだほうがいいだろう。
だがしかし、このようにくっつかれるのも勘弁してほしいし、なによりもマリューを待たせているから彼女達のテーブルに行くわけにもいかない。
そんなことをつらつら考えていたら、不意にレナンディアがムウの首に両手をするりと回し―――
「うわああああっ!?」
ちゅ、っと頬にキスをされた。さすがにムウは力を込めて勢いよく少女の腕を振り解き、数歩後退した。
「何するんだ一体!?」
「まあ、フラガ様ったら可愛いですわね。キスのひとつでそんなに驚かれるなんて」
くすくす笑う少女に、ムウはがっくりと脱力した。はっきり言って、レナンディアの考えていることがさっぱりとわからない。いくらファン―――というか芸能人でもない自分に対してファンというのも変だが―――といえども、初対面の男にここまでできるのか?とムウらしくもなくかなり動揺していた。
その時。
不意に背後から低い声で呼びかけられた。
「……ムウ?」
マリューの声だ。いいところに、と慌てて振り返ると、そこにはものすごく不機嫌そうな顔をしたマリューが立っていた。
「マ、マリュー?」
その表情が怖くて、思わず後ずさる。そのムウの顔に視線を向け、マリューはすっと視線を鋭くした。視線が自分の頬に向けられていることに気がつき、はっとしてムウは手の甲で頬をこする。と、その甲にべったりと赤い口紅がついた。
「マ、マリュー、あのなっ」
マリューがどこから見ていたのかは分からないが、弁解に聞こえようがきちんと説明をしないとまずいと思ったムウが口を開くと同時にマリューが低い声でびしりと言った。
「―――先に帰りますっ」
そしてムウが何か言うよりも早く、踵を返して靴音も高らかにその場から去ってしまった。
うわあああ怒ってる!と顔を引きつらせながらそれを見送ってしまったムウに、「いやだわ、なんですのあの女」とレナンディアが呟く。
その一言で、ムウの金縛り状態は、解けた。
「くそっ」
舌打ちして、後を追おうとすると、くいっと腕を引っ張られた。何をするかと振り返ると、媚を含んだ笑みを浮かべたレナンディアがムウの腕をしっかりと捕まえていた。
「先に帰るというのだから、放っておいていいじゃないですか」
その一言に、先ほどよりも強い力でレナンディアの腕を振り解き、「失礼するよ」と言い放ってくるりと踵を返した。
その背後に、レナンディアの甲高い声が飛ぶ。
「な、なんですのっ。お誘いしているのに失礼じゃありませんかっ!!」
振り返れば、プライドを傷つけられたという顔をした少女が鋭くムウを睨んでいた。しかし、ムウはそれを受け流して肩をすくめた。
「俺の奥さんがなんか誤解して飛び出していったんだから、追いかけるのが当然ってものでしょ?」
にっこりと笑ってムウが言うと、レナンディアは絶句してしまった。その少女を置き去りに、ムウは足早に店内を抜けた。
ムウにして見れば、高官の娘だろうとなんだろうと、マリューより優先するものではありえないのだ。
先ほどまでのんびりと座っていた席にはムウのジャケットしか残っていなかった。伝票もない。しっかり支払って出て行ったのだろう。
ジャケットを手に、店を出る。まだそんなに遠くに行ってはいないだろうと、ぐるりと通りを見回す。
すると、予想通り10メートルほど先、足早に歩くマリューの後姿を見つけた。
「マリュー!」
叫ぶと周りの人々が「何事か」と足を止めてムウを振り返ったが、そんなことに気にもかけずにムウは走り出した。
一方、マリューはムウの声を聞いてびくりと足を止め、振り返る。そして近づいてくるムウを見て―――
「こら逃げるなって!!」
突然走り出したマリューに、ムウは「しょうがねぇなあ!」とぼやき、足を速めた。


意外に足の早いマリューに追いついたのはしばらく走った先、丁度大きな公園があるところだった。


「捕まえたっ!」
ようやくマリューの腕を掴み、その足を止めさせたムウは、「疲れた…」と肩を落とした。
一方のマリューは、「離してっ」とじたばたもがくが、ムウはまた逃げられたらたまらない、と逆に腕を強く引き寄せ胸に抱きこむ。
「マリュー、ちょっと落ち着いてくれよ」
「なによぅ!浮気モノ!!」
叩きつけるようなマリューの言葉に、ムウは「とほほ」と溜息をついた。
「浮気じゃないよー。どっちかってーと交通事故みたいなモンだよ、あれ。しかも俺が被害者」
一方的に捕まえられ、キスまでされたんだから、とぼやく。
「それにさ、」
まだ暴れているマリューの頭をそっと優しく撫でながら、ムウはマリューの耳元に口を近づけ、そっと囁いた。
「俺がキスされたい相手は、好きで好きでたまらない、マリューだけなんだから」
あれはキスのうちにカウントしない、と告げるムウに、ようやくマリューは暴れるのをやめた。それを見て、ムウはほっと肩の力を抜く。
「―――ホントに?」
ムウの胸に顔を押し付けたまま、小声で問いかけるマリューに、ムウは力強く頷いた。
「あったり前だろ?」
そう言うと、ようやくマリューは顔を上げた。まだ少し不貞腐れた顔をしたマリューに、ムウはやさしく笑いかけた。
「信じない?」
「―――信じてる。けど……」
ちらり、とムウの頬に視線をやり、少しだけ眉を寄せたマリューは手を伸ばして乱暴にムウの頬を拭った。口紅、まだついていたか、と内心苦笑していると、ぐい、と両手で顔を下に向けさせられた。
少々無理な体勢に、「首が痛いよ」とムウが口を言いかけたとき。
チュッ、と軽い音を立て、マリューがムウの頬にキスをした。それは先ほどの少女が無理矢理キスした場所とまったく同じで。
「マ、マリュー?」
驚いてマリューを見ると、頬を膨らませたマリューがぷいと横を向いた。
「消毒です!」
「――――――――――――ははっ、」
マリューの答えに、思わずムウは爆笑してしまった。消毒、とくるとは思わなかった。
「な、なによぅ!そんなに笑うことじゃないでしょう!?」
顔を真っ赤にして言い募るマリューをぎゅっと抱きしめなおし、ひーひー笑いながらムウは言った。
「やっぱマリュー可愛いよなあ!」
笑いのツボに入ってしまい、なかなか笑いを止められないムウに、マリューは最初こそ真っ赤な顔で怒っていたが、次第に笑みを浮かべて力を抜き、ムウの身体に寄りかかった。
マリューの髪を撫でながら、ようやくムウの笑いが収まってきた頃。マリューはぽつりと呟いた。
「……別に、浮気とかそういうのじゃないのは分かってるけど……イヤなの」
ただのヤキモチだから、と言うマリューに、ムウは「ごめんな」と謝った。
「嫌な思いさせてごめん」
「うん」
「許してくれる?」
「……次からは、気をつけてくださいね」
二度目は本気で怒りますから、と告げるマリューに、ムウは笑いを収めて額にキスを落とした。
「約束」
「…・…うん。怒って、ごめんなさいね」
「『ごめん』はもう言いっこなしな?」
仲直り、とぎゅっとマリューを抱きしめると、ようやくマリューもムウの身体に腕を回し、抱き返してくれた。



そして翌日。
「あの……仲がよいのは結構だとは思うんですが……観光名所の公園の前でラブシーンを演じるのはどうかと……」
「ふたりとも有名なんですからものすごく目立つんですよ」
無事に休みをもぎ取ってきたナタルとノイマンが複雑そうな顔でそう忠告してきた。
それに対してムウは「いーじゃん見せても減るもんじゃないし」と言って、顔を真っ赤にしたマリューに怒られていた。

fin...


ということでSEED初キリリク申告(ありがとうございます!)をしてくださったちゃな様に捧げさせていただきます。
…マリューさんに怒らせるのが難しかったです(爆)。そして旅行先でなくてもありそうな話だったり(汗)。
ふたりを噂でしか知らない人たちばかりの場所
での,あるヒトコマ…ということでひとつ(笑)。
ちなみに。
ムウ兄,子供や妙齢の女性に対しては上手く流せそうですが中途半端に若い女の子は苦手だと思われます(笑)。


last update 2004/01/02